淡いピンクはあなたの星座。
「あっ」
ペディキュアが剥げてる。手は派手に出来ないから、足だけ真っ赤に塗ったんだ。でも左の小指だけ、あなたに会えますようにっておまじないをかけた淡くてキラキラなピンク色。アナタの星座がモチーフの色。
もうそんなことどうでも良かった。爪の色なんて考えてられなかった。あなたのことなんてどうでも良かった。
朝から夜まで、自分のこと、それ以上に自分以外の人のことばかり考えて。
私何がしたかったんだっけ、何がやりたかったんだっけ、どうしたいんだっけ。気づいたら、私のことなんて何もわからなくなってしまった。
ふと、お風呂あがりに爪先を見つめると、剥げて面影のない赤にピンクがそこにいた。
それは私だ。何もわからなくなった私。自分のことを愛せなかった私。
「ごめんね」と、私に謝って眠る前に優しく上から塗り直す、ペディキュア。
いつもの私、おかえり。いつもの、あなたに早く会いたい私。あなたのこと、どうでもよくなんてないよ、本当は。
「ねえ、今度はいつ会えるかな」
ピンクの小指に話しかけてみる。答えは帰ってこないけど、もうすぐ、今すぐにでもあなたに会える気がして、そっと目を閉じた。