シンデレラ未満
王子様、お元気ですか。
私は、近頃もう少しでシンデレラになれそうです。
シンデレラになっても、
ガラスの靴をあなたが拾ってくれないことはわかっています。
私と踊ってくださらないことも知っています。
あなたが知らない誰かとワルツを踊っても、知らない誰かに愛を囁いても、私はあなたを想っています。
もし落としたガラスの靴を拾ったならば、不燃ゴミとして捨ててください。
もうあなたの元へ向かうかぼちゃの馬車も、ドレスも、なにもかも私には残っていないのです。
あなたを夢見たイヤリングは、どこかへ落としてしまいました。
あなたの名前を呼ぶためのリップは、すり減ってもう少しでなくなります。
0時を過ぎて魔法は解けてしまったのに、あなたの呪いは解けそうにありません。
王子様、東京のどこかで楽しい夜をお過ごしですか?
シンデレラ未満の私は、今日もあなたを夢見て東京未満の街で眠ります。
王子様、それではいつかお元気で。
呪いが解けることを祈ります。