ひとりで君は夜は越える
「大嫌い、大嫌いだよ。」
絞り出すように出た言葉。
泣きそうになりながら、君は、君はそうやって言葉を吐いて夜を越えてきたんだね。
ひとりで越えた夜は今日で何日目?
今日もまた苦しんで、越えたくない夜を明かすんだろう。
屋上で、ぺたりと座り込んで、朝が来るまで吐くんだ。
「本当は嫌いなんかじゃないくせに。」
そう言ったら君はきっと苦しそうに悪態をつく。
「うるさい馬鹿。好きな人も、あいつも、好きな人を好きなあいつも、みんなみんな大嫌いだ」
そう、こんな風に。
君は、その人のことすごく好きだったんだね、すごく。
僕はこうして君のかなしみを聞くことしかできないんだ。君を救えない。
ごめんね、だって僕は君の好きな人ではないから。
ひとりの夜を今日も明日も絶対に越えて、君はいつかしあわせになるんだよ。
僕はそのとき、君の近くにはいないかもしれないけれど、願ってるよ。
君がひとりの夜に、君は気づいていないけど僕は君と一緒にいるから。
ほら、もう少しで夜がまた明けるよ。