話したくなったから

君色に染まるまで、わがままに。

全部許して。

好きになりたての頃に夢を見ました。



あなたは喫煙室でとても仕立ての良いスーツを着てアンニュイな表情をしながらタバコを吸っている。
私はそれを喫煙室の外で見ている。
そんな夢でした。



夢でもガラス越しにあなたを見ることしかできないのだとそう思いました。
最初はそんな距離感が心地よかったはずなのに、どこで、なにを間違えてしまったのでしょうか。



その夢を見て暫くしてあなたに触れる機会がありました。
あなたに触れた時、私は震えが止まりませんでした。
私は「大好きです」その1言を言うのに精一杯でした。きっと精一杯すぎてどれだけ醜い顔で、震える声で、汗ばんだ手であなたに声をかけ、触れていたのでしょうか。
それでもあなたは『ありがとう』と目線を合わせ、微笑んでくれました。



私はその後、震えが止まりませんでした。
心臓もありえないくらいバクバクと音を立てて、泣いていました。
買った紙パックのジャスミンティーに奮えながらやっとストローを挿して飲み始めると思い切りジャスミンティーを落としてしまいました。
落としたジャスミンティーはじわじわと広がって真っ白なおろしたての白い靴に染みをつくっていきました。



きっともうここからなにか間違えていたんだと思います。
こうやって思い出してしまうのも良くない癖かもしれません。



暫くあなたの夢は見ていません。
あなたに触れることもしていません。
もしかしたらもうあなたに触れることはないかもしれません。
そしてもうあなたの夢を見ることはないかもしれません。
でも、もし、また、あなたの夢を見ることがあったら、夢の中だけでいいからガラスを越えてあなたの側にいることを許してください。触れることを許してください。



きっとその時はジャスミンティーはこぼさないから。