超楽しい地獄。

君色に染まるまで、わがままに。

成仏できないかわいい塊。

初めて買った化粧品はなんだったかな。
多分、ほんのりと色づくオレンジのルージュだった気がする。かわいいデザインで蓋の先が花の形になっていて開けると鏡になったんだっけ。
箱を開けて手に取ったとき、魔法が使えるかもしれないって少し期待しちゃった。今も手に取るたびに魔法が使えるようにならないかなって思ってるんだよ。


ちょっと夢を見すぎていた頃、リップケースにあなたの名前を彫ってもらったこともあったなあ。
あなたの名前を呼ばれるのがくすぐったくて、ドキドキして、スカートの裾をぎゅっと握りながら、赤い頬を隠す為に下を向いて『大丈夫です』なんて返事をしたんだよ。


あとね、あなたみたいな、あなたの色のアイシャドウも買ったんだ。一目惚れして、似合わないくせにね。結局あなたに会う時には一度もつけたことないんだけど。



最近はどうだっけ。あー、あなたに会えることが決まって嬉しくって浮かれていてほんのりピンクでキラキラ光るアイシャドウを使い出したんだ。
すごくかわいくて、色がかわいいだけなんだけど、私までかわいくなった気分になれるの。どうせこっち向いてくれないの知ってるけど。



最初は、かわいいって言われたかっただけなのに。こんなに増えちゃった化粧品、かわいいって言われなかった分だけ増えたかわいい塊。持て余してごめんね、私があなたを見つけてごめんね。



綺麗に磨いて、もう一度あなたにかわいいって言われたいから、諦めきれない。だから次は持て余さないよ。
『私に力を貸してね』と囁いて化粧品たちをケースにしまった。