最小単位の話
僕と君。最小単位の世界しか話せない。
だからもう君がいた世界の話しか僕はできない。
君は、楽しそうに笑うね。笑ったときだけ無邪気な顔をする君が僕は大好きだった。
普段は難しい顔してさ、何考えてるかわからなくて。まあ、そこも素敵だったよ。
喋るとふわっとして、掴めなくて少しドキドキしたこともあったね。
君の声は、甘くて甘くてどこまでも甘かった。ずっとアメリカのお菓子みたいなんて言ってたよ。
柔らかくて白い肌とか、チョコレートみたいに染めた髪も、深い黒の瞳も、全部覚えてるよ。
でも、君はもうどこにもいないんだね。毎日毎日楽しかった日々を思い出しては、泣いて、忘れようとして、繰り返して。馬鹿だね僕は。
僕は君がいた世界の話しかできないんだ。君を思い出すことしかできない。君がいない世界の話はできないよ。だって君がいない世界は何もないから。いつかまた君のいる世界で、生きていけたらいいな。