天の邪鬼なふたり
朝か昼かわからぬ時間。
ばたばたとお風呂場へ向かう君。
朝シャンには遅いし、今日は特段汗をかくほど暑くはない。
窓からは心地よい風がふき、陽気もぽかぽかとしてる。
まるで青空の下にいるようだった。
僕は、また眠気に襲われぼーっとしていた。
すると、
「ねえ、このシャンプー金持ちのオバサンみたいな匂いじゃない!?」
君は、「嗅げ!」と言わんばかりにシャンプーを僕の鼻に近づけていた。
ピンクのラベルが貼られた緑のボトル。
僕の家のお風呂場に、勝手に置いていったそれ。
僕は、突然のことにわけもわからず、
「そんなに近づけたら匂いなんてわからないよ。」
と、ボトルから顔を離しながら答える。
すると君は不服そうな顔をしてお風呂場へ戻っていく。
花畑のような優しい香りがふと僕の鼻を掠める。
君の髪が太陽に照らされて、美しく光る。
本当は、近づけなくてもにおいなんてわかっていた。
さっきのは嘘なんだ。
僕が好きなんて言ったら天の邪鬼な君のことだから、
「じゃあやーめた。新しいの買ってこよ。」
言うと思ったんだ。
本当は好きだよ。
シャンプーの香りも、君も。
これは内緒ね。
※note(天の邪鬼なふたり|七咲。|note)からの再掲です。